独自性と創造性

幹線交通網計画に関わる主要要因の相互関係と,研究代表者らが開発してきた数理計画モデル群がカバーする範囲の変遷を図-1に示す.当初の⓪GA(遺伝的アルゴリズム)による擬似最適化では,利用可能経路の事前列挙が柔軟性を損なうという問題があった.

そこで最適施設配置モデルの研究経験を生かして数理計画法を導入し,②混合整数計画(MIP)による経路生成内生化e)と環境負荷制約の考慮(図-2)6),災害抵抗力を高める補強計画問題への拡張4),③二次目的関数(QP)によるサービス水準に対する需要反応の考慮(図-3)3)によって問い(A)に答えてきた.

次いで④運営費用分担の二次錐制約(SQCP)表現(表-1、図-4)1,2)により問い(B)の解決法を見出した.これらの数理計画法に基づくネットワーク計画モデルの研究は,国際的に見ても独自性が高く,論文citationも増加しつつある.

本研究は以上の問い(A)(B)の解決策の延長線上で,数理計画法に基礎をおいて問い(C)(D)に答える研究を進め,表-2のような特徴を持つレジリエントなネットワークの計画法を開発する.
 問い(C)に対して,環境制約,感染を抑制する適正密度,需要変動,災害時の連結性を考慮した多目的計画,経済成長に対応する段階的計画,人口縮小下での維持・更新戦略を,多目的動学問題として統一的に扱う.
 問い(D)に対して計算効率化の方法や双対変数等の情報活用方法を研究する.

なお,本研究で提案する方法論は,一旦整備すると長期間供用され,容易に変更できない一般のインフラにおける,短期的な稼働水準の変更,使用料金による利用度の誘導を含めたレジリエントな整備・運営計画方法の開発に展開可能と考えている.