研究計画

本研究は5年間の研究期間を設定し,表-3に示すタイムラインに沿って一国規模の幹線交通ネットワーク計画の方法論を開発し,アジア諸国への適用性を確認する.

1) 2022年度の研究計画(課題共有と基本データの準備:問い(A)(B)解決策の有効性確認)
COVID-19影響下の幹線交通の利用状況と計画課題を収集し既存モデルを対象国(ベトナムを想定)に適用して,定期的勉強会,海外協力者を交えたキックオフシンポで共有する.
(需要構造)SQCPモデルは需要関数を積分した消費者余剰を目的関数としている.第6回全国旅客純流動調査結果等に基づき,需要構造を分析し需要関数を同定する.
(供給性能)地上交通(鉄道・バス),航空について,性能と整備・運営コストの算定を行う.
(数理計画)既存研究では計算効率性が低く,ネットワークサイズが制約されている.問題の数理構造に基づいた、次数削減、分解等の計算効率化方法を列挙する。

2) 2023年度の研究計画(多様な要請に応える多目的化:問い(C)(D)解決方向の検討)
 地球環境問題やSDGs等の潮流を踏まえ,利便性以外の要請を取り込む方向性を研究する.
(需要構造)モバイル空間統計データ等に基づき,旅行需要の季節的変動を分析する. 
(供給性能)交通機関ごとの環境性能,事業採算性に関わる制約条件の定量化を行う.
(数理計画)多目的問題の制約条件化,加重目的化による計算負荷への影響を検討する.

3) 2024年度の研究計画(長期計画のための多時点化:問い(C)(D)解決策の確立)
 中規模なネットワーク(タイ,インドネシア)での計算例を踏まえ,海外協力者を交えた中間シンポジウムを開催して,問題の多時点化の方向性を検討,確定させる.
(需要構造)複数時点の純流動調査結果に基づき旅行需要の長期的な変動を分析する.
(供給性能)交通機関ごとの施設性能の長期的な劣化、補修/更新コストの定量化を行う.
(数理計画)鉄道や空港などの不可逆な変数と、航空サービスなどの変更容易な変数に注意して、逐次的分解などにより多時点最適化を縮約し計算可能にする方法を検討する.

4) 2025年度の研究計画(変動を考慮と動学問題の計算法改善:問い(C)(D)解決策の展開)
 多目的モデルを対象国へ適用しつつ,多時点動学問題の計算方法改善と実用化を進める.
(需要構造)時間解像度に優れるモバイル空間統計データ等を援用し,災害などの異常時の都市間旅行需要の変動幅を分析し,価格変動や情報提供による誘導・対応策を検討する.
(供給性能)交通機関の技術革新や更新動向を確認し,多時点計画問題へ反映させる.
(数理計画)多時点計画問題の数理構造に基づき,長期最適化計算方法の改善を検討する.

5) 2026年度の研究計画(長期計画モデルの実用化と総括:問い(A〜D)解決策の総合化)
 本研究を総括する国際シンポジウムを行い,一般的なインフラ計画への示唆をまとめる.
(需要構造)季節変動や異常時の需要変動に対応し、ネットワークの性能を効率的に発揮させる,需要をコントロールするための価格変動と情報提供による誘導策を検討する.
(供給性能)技術の発展動向に即した最適な更新/補修戦略の導出を計画問題に組み込む.
(数理計画)効率的な計算方法を実装した分析ツールの作成を行う.